エスキス アムール
第55章 オムライス
簡単に波留くんが僕から離れていくわけがない。
波留くんを信じていないわけでもない。
今回は矢吹に喧嘩をふっかけられたくらいで、あんなに束縛してしまうのはやりすぎだったと思う。
波留くんの事をまるで信用していないと言っているようなものだ。
けれど、どうしても今回は不安だった。
波留くんが矢吹のことを時折目で追っていると聞いたとき、本当に焦ったのだ。
もう、彼を手放すことなんてできない。
だから、閉じ込めておくのに必死だった。
けれども、彼は行ってしまった。
行くなと止める僕と、
片時も外すことのなかった、ペアウォッチを机の上に置いて。