エスキス アムール
第1章 ジゴレット
それは
あっけなく終わってしまう、
薄っぺらい関係だ。
大野さんのことを考えるのは、
とても好きだった。
大野さんは
とても優しい。
だから、
此処にも来てくれるのだ。
私が一度、
もう大丈夫と言ってしまえば、
彼はもう来なくなるだろう。
私が彼を縛り付けている。
そんな事はわかっていた。
だけど、
自分で終わらせるなんて
出来るはずがなかった。
大野さんの事を考えると、
いつもそこに行き当たって、
気分は憂鬱になった。
お客さんはただ、
自分の欲を
受け止めてくれる人を
求めているだけで、
自分のことを
好きになられたら
困るのだ。
それは、私だってそう。
大野さん以外の人には
好きになられても困る。
大野さん以外の人には。
「はぁ…」
最近
ため息しかついてないや。
そのことに
また、ため息をついて、
目を瞑った。