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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

「わかりません。」

私の返事に顔を歪めた階堂さん。

「だって階堂さんには、婚約者がいるって……」

「婚約者?」

「いるんでしょう?取引先のお嬢様が。」

階堂さんはうろたえながら、髪を掻き上げた。

「聞いてくれ。彼女は婚約者じゃない。」

「じゃあ、階堂さんの会社の人が、そう言っていたのは、なぜなんですか?」

「おそらくその取引先から、急に発注が増えたせいだろう。誤解だよ。」

こんな一回りも年下の私に、真面目に答えてくれて、階堂さんは面倒な女だと思わないのかしら。

「機嫌、直った?」

そしていつもの温かい口調。

「まだ説明が足らない?」

そしてその温かい手で、私の涙を拭ってくれた。

「君の誤解が解けるまで、俺はここに通い続けるから。」


私の中で、何かが解けていく


「君が望むのなら……」

階堂さんがそう言った隙に、私は彼の唇を塞いだ。

「美雨ちゃん?」

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