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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

「美雨。君が大層なものじゃないと言う物が、芸術品に見えてしまうほど、俺は君に夢中なんだよ。」


どうして人は、好きな人に耳元で愛を囁かれると、嬉しいはずなのに涙が出るのだろう。


「誰にも渡したくない。一生君を、俺の腕の中に閉じ込めておきたい。」

「うん……閉じ込めて。」


ほんのりとした灯りの中で、階堂さんの優しい眼差しだけが、私の瞳に映る。


「一生、階堂さん以外の人を見れないように、私を階堂さんだけのものにして。」


階堂さんの熱い想いが、私の身体の中に広がっていく。

女はなぜ、自分を抱いている時の、男の真剣な眼差しに、胸が切なくなるのか。

抱きあうその体と体の境が無くなって、それぞれ別々の個体が一つになるのを感じるのはなぜなのか。

今の私には、わからない。

だけどそれは、一生かかっても、目の前にいる階堂さんと二人で答えを探していきたい。


「敦弥って呼んで、美雨。」

そう言われた私は、その夜。

愛しい人の名前を、一晩中呼び続けた。

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