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Gentle rain

第7章 心と体

「でも、私たちは何も感じなかった。ただそれだけの事でしょう?」

肯定も否定もできない。

肯定すれば、菜摘さんを傷つけ、否定すれば美雨を裏切ったような気がするからだ。

「うん。このカルボナーラ、美味しい!そちらはいかがですか?」

「ああ…やっぱり美味しいですよ。クリーミーなのに、さっぱりしていて。」

今までの神妙な話がウソのように、菜摘さんはふふふっと笑った。

「ここ、お店の雰囲気もいいし。また来ようかな。」

「ええ、ぜひ。また来ましょう。」

そして菜摘さんは、つきさっきの俺と同じように、返事をしない。


大人というのは、白黒はっきりさせない時がある。


子供の頃は、相手に期待させてしまうと、純粋な年代なだけに、いつまでもその期待を消えなくさせてしまう。

じゃあ、大人はどうなんだろう。

経験から、その期待はしぼんでいくのではないだろうか。

だから敢えて、その期待をむやみに消さないのかもしれない。

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