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Gentle rain

第7章 心と体

「夏目社長の娘とは。やるね、階堂君。」

俺はじっと森川社長を見つめた。

「夏目社長のご婦人は、誰もが一度は目を奪われる程の美貌の持ち主だった。」

「……知っているんですか?彼女の母親を。」

「知っているさ。俺も心を奪われた。一瞬でな。」


森川社長は、隣に菜摘さんがいる事を忘れているように、昔の思い出に目を向けていた。

「だが彼女には既に、夏目社長がいた。出世欲もなくただのお人好しのあいつがな。」


太我と美雨の父親。

俺にでさえ親切にしてくれた夏目社長を、“あいつ”呼ばわりした森川社長を許せなかった。

だが何も言えずにただ黙っているだけの菜摘さんが、ちらっと視界に入って、俺は拳をグッと握って、森川社長の話の続きを聞いた。


「ある時…夏目が仕事で忙しいと言って、彼女一人でパーティーに来た。誰もが彼女に声を掛けた。だが誰一人彼女を口説けなかった。あの人の……凛とした態度が、男たちの野心を遮ったんだ。」

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