テキストサイズ

Gentle rain

第7章 心と体

俺と太我は、しばらく見つめ合った。

お互い、嘘偽りを言わない。

相手を信じる。

それを確かめ合っているようにも、思えた。

いつだったか。

森川社長に、『夏目太我に惚れたか。』と尋ねられた。

あの時は冗談にも程があると思ったが、今は違う。

太我の事を、一人の人間として、心から信用しているのだと、思うのだ。


「美雨。」

「なに?」

「棚の奥から、ワインを取ってきてくれないか。」

「うん……」

美雨はソファから立ち上がると、太我は自分の隣の席を引き、ここに座れと手を差し出した。

俺は無言で立ち上がり、太我の隣の席に座る。

二人で足を組むと、膝が触れるか触れないかの距離だった。


そこへ丁度、美雨が一本のワインと、グラスを二つ持ってきてくれた。

オープナーを持ち、美雨がワインを開けようとした時だ。

「ああ、いい。俺が開ける。」

そう言って、太我は美雨からワインと、オープナーを受け取る。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ