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Gentle rain

第8章 優しい雨

いつか、敦弥さんが言ってた。

今の仕事は、自分の人生が詰まっているって。


「うん…わかった。」

寂しいけれど、納得しなきゃいけない。

「美雨。」

兄さんは、私の肩に腕を回した。

「この状況が、いつまでも続くわけじゃない。階堂の会社が持ち直せば、またいつもと同じように、階堂と会う時間が取れるよ。」


恋人同士のハグとは違う。

親は子供にするような、そんな安心するハグだ。


「うん。」

兄さんはいつだってそう。

私が寂しくないように、いつも励ましてくれる。

「美雨。俺、美雨には誰よりも幸せになってほしいんだ。」

抱きしめてくれる腕の力が、心なしか強くなる。


「美雨には、俺のせいでたくさん迷惑をかけた。」

「迷惑って?」

「俺の為に、一番大事なモノを失った。」

私が少しだけ兄さんが離れると、あっさり兄さんの体は、私の体から遠のいた。

「…別に私、何も失っていない。」

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