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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

あれから数年後、夏目はまだ23歳のいわゆる青年実業家だが、周りも皆、一目置く存在となった。

数か月に一度行われる懇親会の場でも、少し離れた場所から彼を見ると、社長に成りたての頃の怯えた表情は、どこへやら。

一回りどころか、二回り以上も歳の違う年配者達と、上手く渡り合っている。

「やあ、階堂。」

最近ようやく俺を呼び捨てにしてくれるようになった夏目は、俺の姿を見ると、必ず傍に来てくれた。

「相変わらず忙しいようだな、夏目。」

「階堂程じゃあないよ。」

そう言ってシャンパンを飲む仕草一つとっても、自信に溢れているのは、少なくても仕事がうまくいっている証拠なのだと、会う度に思う。

「夏目君。」

「はい。」

そんな夏目は、年配の方の格好の餌食だ。

「また後で。」

彼は軽く手を挙げると、呼ばれた方へと向かって行く。

ここ数カ月、夏目ともまともに話をしていない。

聞きたい事は、たくさんあるのに。

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