テキストサイズ

Gentle rain

第8章 優しい雨

「でも、敦弥さんと出会って。人を愛することを知って。あの時の、あなたの気持ちがなんとなくわかったような気がするの。」

「へえ。どんな気持ち?」

胸が急に締め付けられて、目に涙が溜まってきた。

「私の事を、少しは……愛してくれていたんじゃないかって……」


そうよ。

愛する人を欲しくて。

少しでも自分の傍に、居て貰いたくて。

でもその方法が、わからなくて。

強引に奪って。

それでも、相手は自分を向いてはくれなかった。


「だから?」

「えっ?」

驚いた事に、彼は一切表情を変えず、私の目の前に立っていた。

「私の事を愛しているんだったら、兄さんと彼を助けてあげてとでも、俺に言いたいの?」

単調な言葉の羅列。

「言ったろ?これは取引だって。」

あまりにも冷たくて、私は一歩後ろに下がった。

「愛とか恋とか、女はよく口にできると思うよ。そんなのは、ただの妄想だと言うのに。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ