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Gentle rain

第8章 優しい雨

「取引だな。」

三科紘文は、冷たい視線を私に浴びせた。

「俺の女になれば、あんたの兄貴と恋人。両方助けてやる。」

その視線に、また背中がヒヤッとする。

数年前の、私を襲った時の人とは違う。

「嫌だと言ったら?」

「別に。俺は困らないし。あの二人が路頭に迷うだけだし。そうなら、あんたも一生苦しむだけ。」

やっぱり、数年前とは違う。


あの時は……


「変わったんですね。」

「そうかな。」

三科紘文は、眉一つも動かさない。

「あの時……私を自分のモノにした後、あなたは私に、上着を掛けてくれた。」


目の前に起きた現実を受け入れられなくて、何も考えられずに、ボーっと遠くを見ていた私に、三科紘文は自分が着ていたジャケットを私に羽織わせてくれた。

私に乱暴を働いた犯人なのに、その瞳は悲しそうで、益々私は彼を解らなくなった。

「あの時には、解らなかった。なぜあなたがそんな行動に出たのか。」

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