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Gentle rain

第8章 優しい雨

先に唇を離したのは、私からだった。

「美雨……」

「敦弥さん、私、そろそろ行くね。」

「ああ……」

にっこり笑って、私は敦弥さんに背中を向けた。

「美雨!」

身体がビクッと反応する。

「今度……」

敦弥さんに話しかけられた私は、ゆっくりと振り返った。

「今度、どこか旅行に行こうか。」

「旅行?」

「うん。美雨の好きな場所、どこでもいいから。」

私は大きく頷いた。

「気をつけて帰れよ。」

「うん。」

「時間も遅いから、寄り道するんじゃないぞ。」

「何それ。子供じゃあるまいし。」

私は下をペロッと出した。

そんな私を見て、敦弥さんはクシャっとした笑顔を見せてくれた。

「敦弥さん。」

「どうした?」

「私、幸せよ。」

急にそんな事言うものだから、敦弥さんは面食らった表情をしていた。

「……よかった。美雨にそう言って貰えて。」

敦弥さんのホッとした表情を見ると、私もホッとした。

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