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Gentle rain

第8章 優しい雨

敦弥さんに手を振って、私は社長室のドアを閉めた。

「美雨さん。」

一息もつかないうちに、廊下で待っていた菜摘さんに見つかってしまった。

「…決心、ついた?」

菜摘さんのその言葉に、私は目を閉じた。


知っていたんだわ。

私が敦弥さんに会わせてと言った理由を。

「はい。」

私は一言だけ返事をすると、エレベータに向かった。

「美雨さん!」

廊下に菜摘さんの声が響く。

「ごめんなさい……許して、美雨さん。」

涙声で菜摘さんは、私に許しを乞うように謝った。

それが余計に、私を惨めにさせる。

「どうして謝るんですか?」

「えっ?」

ふいを突かれたように、菜摘さんは立ち尽くしている。

「菜摘さんは、敦弥さんの事が……好きなんですよね。」

少しだけ振り向いた時、黙ったまま菜摘さんは、泣いていた。

「だとしたら、敦弥さんを幸せにしてあげてください。」

私の最後の強がり。

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