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Gentle rain

第9章 雨あがり

「菜摘さん。俺もあなたの気持ちは嬉しい。」

俺は菜摘さんの腕を掴んだ。

「階堂さん。」

その腕を少し手前に引いて、菜摘さんを俺の横に座らせた。


「菜摘さんと結婚すれば、俺は平凡な幸せを手に入れることができると思う。」

「じゃあ、私と……」

「でも、それは俺の望む人生じゃないんだ。」

菜摘さんの笑顔は、一瞬で消えた。


「今の仕事ができなくなってしまうのは、俺の実力が足りなかったせいだ。誰かのせいじゃない。平凡な幸せを手に入れることも諦めるしかない。」

「どうして!?」

菜摘さんは俺の両肩に、手を添えた。

「今まで成功する為に頑張ってきたのに!どうしてあんな若い女の為に人生を諦めなきゃいけないの!?」


俺を責める菜摘さんを、真っ直ぐに見つめた。

「出会ってしまったから。」

「えっ?」

「欠けた自分の半分を埋めてくれる人に、俺は出会ってしまったから。」

菜摘さんは、そっと俺から離れた。

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