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Gentle rain

第9章 雨あがり

「私じゃあ、ダメなのね。」

「そうじゃないよ。俺が…美雨じゃないとダメなんだ。」

しばらくの沈黙後、菜摘さんは部屋を出て行った。

後から残ったのは、虚しさとただただ残る美雨への想いだけだった。


俺は床に敷いてる絨毯の上に、大の字になって寝そべった。

いい歳をした男が、一人の女の子を恋しく思って涙をこぼしているなんて。

誰が聞いても情けない話なんだ。


そんな自分が可笑しくなって、自分で自分を笑った。

笑い転げた後に、目に飛び込んできたのは、真っ暗な部屋の窓に映る雨。

激しく振るわけでもなく、霧雨のように体に纏わりつくでもない。


こんな雨の中。

美雨は、どんな気持ちで俺の元から去ったんだろう。


少しでも俺の事を愛してくれていたのなら。

もしこの別れが、彼女の心を激しく痛めるのだったら……

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