テキストサイズ

Gentle rain

第9章 雨あがり

「じゃあ、お疲れ様です。」

「お疲れさん。」

事務の女の子と別れて、正反対の道を歩きだした。


いつもの帰り道。

だが、この日はなんだかいつもとは違う雰囲気を感じていた。

いつも見えている小さな星明かりが、今日は見えない。

「曇ってるのか。」

自分の心を映し出しているような気がして、足を止めた。


あの後、俺の会社は倒産。

なんとか、自分でまた店をやれないか、知人を駆けずり回ったけれど、皆、森川社長を恐れてか、協力は貰えなかった。

なんとか再就職口を見つけたが、生活は一変してしまった。

でも最近は、サラリーマン生活も、慣れれば気が楽になってきた。



少しだけ前向きな気持ちをになって、また止めていた歩みを動かし始めた時だ。

ポツッと、冷たい物が俺の頬に当たった。

辺りを見ると、道路が濡れている。

「なんだよ。本当に降ってきた。」

人の言う事は、聞くものだなと思いながら、足早に帰り道を急いだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ