テキストサイズ

Gentle rain

第4章 偶然

ありきたりの会話。

今はそれだけでも嬉しい。

「そうだ。知人の誕生日のプレゼント探しているんだけど、美雨ちゃん、何かいい物ないかな。」

「誕生日……プレゼントでございますか?」

あっ、今の言い方、店員として失格だわ。

私は慌てて口に手を当てた。

「いいんだ。俺みたいないい歳した大人が、雑貨屋にいるなんて可笑しいよな。」

そう言った途端に階堂さんは、周りをキョロキョロと見渡し始めた。

「いいえ……お洒落なプレゼントをお選びになられる方だと思います。」

「え?」

偶然だけど、階堂さんと目が合った。

そしてそのまま……

私と階堂さんは、時間が止まったように、二人で見つめ合ってしまった。



「ごめんなさいね。」

ハッとして後ろを見ると、他のお客様が私の横を通り過ぎた。

「申し訳ございません。」

頭を下げて、また階堂さんを見ると、もう違う方向を向いていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ