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Gentle rain

第4章 偶然

「すみません。」

男性の声がして、私は真後ろを振り返った。

「あれ?」

そこには、懐かしい姿。

忘れもしない。

あの、雨の日に、兄さんが連れて来てくれた人……

「階堂さん。」

「覚えてくれていたんだ。君は夏目の妹の……」

「はい。美雨です。」

優しく笑ってくれた階堂さんは、あの人同じで、眼鏡の奥の瞳に、吸い込まれそうだった。

「驚いた。美雨ちゃん、こんなところで何をしてるの?買い物?」

あまりにも自然に聞かれたから、思わず“はい”って言いそうになっちゃった。

「あの……」

「ん?」

階堂さんはずるい。

その目で見つめられると、何も言えなくなってしまう。

「もしかして、ここで働いているの?」

階堂さんに、先に答えられてしまって、私は仕方なく『はい。』と返事を返した。

「そうなんだ。いつから?」

「…2週間前からです。」

「へえ。もう仕事は慣れた?」

「はい。」

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