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Gentle rain

第4章 偶然

それは手帳だった。

黒い革の手帳。

私はそれを拾い上げてみた。

誰のだろう……

その手帳を開く事が、いけない事だと知っていても、落とし主を調べる為だと言い聞かせて、後ろのページを数枚めくった。

「階堂さん?」

そこにはやけに大人びた字で、【階堂敦弥】と名前が書かれていた。

万が一この手帳を落としてしまった場合の時に、階堂さんが自分で名前を書いていたのだろう。

ああ、そうなんだ。

この手帳、階堂さんのものなんだ。

そんな淡い恋心が、またページをめくらせてしまう。

だがその手は、今月のスケジュール表で止まった。

調度、明日。

その日付に、私は我が目を疑った。

【菜摘さんと食事】

菜摘さん。

女性のものだろうという名前。

そして、先ほど『これも』と、レジで差し出したイランイランの香りがするキャンドル。


ああ どうして私は舞い上がってしまったんだろう。

やっぱり階堂さんは、大人の男性で、立派な大人の女性がお相手にいるじゃない。

私は虚しさと共に、しばらくその場に立ち尽くした。

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