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Gentle rain

第5章 初めての夜

「そうか。」

プライベートの予定だから、あえて秘書の子に言わなかったのが、裏目に出てしまった。

「君、少し頼まれごとをしてくれないかな。」

「はい。何でしょう。」

「森川社長の会社に電話して、今日のホームパーティー何時から始まるか、聞いて貰えないか。」

「私がですか?」

秘書の子は“自分で聞けばいいでしょうに。”という顔をしている。

無理もない。

あと20分で定時の時間だ。

「頼むよ。あの、ほら!君が欲しいって言ってた香水、今度買ってきてあげるから。」

「約束ですよ。」

「はいはい。」

買ってあげるって約束して、忘れた事なんて一度もないだろうに。

だが仕方ない。

今のご時世、いくら秘書とは言え、プライベートにまで巻き込むと、公私混同と言われ、下手すればパワハラだ。

「社長。」

「ん?もう聞けたのか?」

さすが仕事が早いなと思いながら顔を上げたら、秘書の子は内線の受話器を持ちながら、こちらを見ていた。

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