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Gentle rain

第5章 初めての夜

「受付からお電話ありまして、『社長のお忘れ物をお届けにあがった』という方が、いらっしゃっているようです。」

「忘れ物?」

「はい。」

何だろう……

そう思いながら椅子から立ち上がり、念の為に上着を羽織った。

「今行くと、伝えてくれ。」

「はい。」

用件を伝えて受話器を置く秘書の子の脇を通り、俺は社長室のドアを開けた。

「社長?」

「ん?」

秘書の子が、すかさず俺の開けたドアを、手で押さえてくれた。

「忘れ物って……もしかしたら、手帳なんじゃないですか?」

「えっ?」

まさか?

そんな事ってあるのか?

俺は自問自答しながら、秘書の子と目を合わせた。

「かわいい子だといいですね。」

「誰が?」

秘書の子が急に、悪戯に微笑む。

「入口で待っている子、若い女の子だそうですよ。」

「はあ?」

「いってらっしゃいませ。」

そう言って秘書の子は、ゆっくりと社長室のドアを閉めた。

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