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Gentle rain

第5章 初めての夜

また人のいないエレベーターに乗り、社長室がある一番上の階を目指す。


ふと彼女が届けてくれた手帳を見た。

今までの手帳とは、違う物のように見える。

彼女が拾ってくれた手帳。

彼女がページをめくった手帳。

彼女が届けてくれた手帳。

俺は、彼女が触れた手帳をそのまま、顔の上に持って来て、年甲斐もなく、軽く手帳にくちづけた。


間もなくエレベーターは、何もなかったかのように止まり、俺は静かな音を立て、社長室の扉を開けた。

「お帰りなさいませ。」

「……ただいま。」

俺は急いでデスクに戻ると、勢いよく椅子に腰かけた。

「いかがでした?」

秘書の子が花瓶の花を直しながら、尋ねてきた。

「ああ。君の言う通り、探していた手帳だったよ。」

「それはよかったですね。」

「ああ、ありがとう。」

しばらくして秘書の子は、花を整え終わると、身体をクルッと俺の方に向かせた。

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