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Gentle rain

第5章 初めての夜

「俺、待ってるから。君がまたここに来てくれるまで、ずっと待ってるから。」

俺を見つめる彼女の瞳に、吸い込まれそうだ。

「お願いだから……来るって…言ってくれ。」


俺は可笑しいんじゃないだろうか。

一回り以上も年下の、二十歳の女の子に、こんな事を言うなんて。


その証拠に、俺は今にも彼女の唇を、奪ってしまいたい衝動に駆られている。

だが彼女は、俺の気持ちを知ってか知らずか、首を少しだけ下に下げると、そのまま背中を向けて行ってしまった。


会社に戻る足元が重い。

こんな気持ち、初めてだった。


会う約束をしたのに、会えないかもしれないという心の落ち込み。

今までの女なんて皆、会えなくても大人同士なのだから、仕方無いと思っていた。

それが大人としての冷静な対応ではなく、今思えば、そこまで熱くなれる相手ではなかったとしたら?


俺は会社のドアを開けながら、人知れず首を横に振った。

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