テキストサイズ

Gentle rain

第5章 初めての夜

なるほど。

菜摘さんのそんな優しさに、男はつけこむのかもしれない。

「おかげで、いい夢を見させて頂きました。」

「いい夢で、終わらせるんですか?」


せっかくそこまでに、辿りついたというのに。


「はい。所詮、僕は階堂社長には敵わない。」

「えっ?」


どの辺が?と聞き返したい。


「菜摘さん、ふとした時に、階堂社長を見つめていらっしゃいましたよ。」

「菜摘さんが?」


まずい。

これでは、勇気を出した彼に失礼だ。


「気のせいではないでしょうか。」

「お気づかいは、無用ですよ。そのプレゼント、」

田辺君は俺の背中の影に隠れている物を、指差した。

「菜摘さんへの贈り物なんでしょう?」

「ああ、まあ……手ぶらで来るのも、なんですからね。」

何とか誤魔化せないかと、必死だった。

「ハハハっ!僕なんか堂々と手ぶらです。と言うよりも、ほとんどの人が手ぶらじゃないですかね。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ