テキストサイズ

Gentle rain

第5章 初めての夜

ウェイターに案内された席は、店の中央に程近い場所にあった。

俺なんかは、もっと端にある席がいいと思ってしまうのに、そんな事をお構いなしだと、余裕で坐る彼女は、こんな状況に慣れているのか、それともただ単に若くて何もわからないだけなのか。

少なくてもウェイターに椅子を引いて貰っている様からは、俺は判断がつかなかった。

「二十歳超えてるんだっけ?」

「はい。」

彼女は俺の持っているリキュールのメニューを見ながら答えた。

「結構飲む方?」

今度は静かに、首を振った。

「飲みたいお酒、ある?」

少し考えた彼女は、微笑みを返してくれた。

「……お酒の事は、まだあまりわからなくて。」

期待通りの答えに、こちらまで微笑んでしまう。

俺はウェイターを呼ぶと、カヴェルネ・ソーヴィニヨンのワインを1本頼んだ。

「ワインは飲んだことある?」

「はい。兄がたまに飲んでいるものを、飲ませて貰った事があります。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ