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Gentle rain

第5章 初めての夜

そんな事は言っても、彼女を連れて行くお店は、正直困った。

彼女は若くても、お世話になった夏目社長のお嬢さんだ。

下手な場所には連れて行けない。

迷った挙句連れてきたのは、よく知っている場所だった。

「素敵……」

彼女は思った以上に、感激しているみたいだった。

「ここ、ホテルの1階にあるレストランですよね。高くないんですか?」

そんな質問は、なぜか可愛く聞こえる。

「まあ、そこそこいい値段もするけど……」

「えっ?」

彼女の顔が途端に、曇り始める。

「接待でよく使うんだよ。会社から遠くないし、かと言って近くもないし。上がホテルだから、相手を送らなくてもいいし。」

そう言うと彼女は、知らない事を教えてもらったと言わんばかりに、軽く頷く。

若い女性のそんな表情を見ると、もっといろんな事を教えてあげたくなるのは、歳をとった証拠なのだろうか。

「お店はあの奥。」

俺は彼女の背中に軽く手を当てた。

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