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Gentle rain

第5章 初めての夜

彼女はしばらくメニュー表を見ていると、スッと一点を指さした。

「このコースがいいと思います。」

「どれどれ?」

どんな物を選んだんだろうと、少しワクワクしながら、彼女の指さした物を見た。

仔牛ヒレ肉の低温ロースト、黒毛和牛のポワレ、みつ葉の香るヴィシソワーズ等、どれも美味しそうな物ばかりそろったコースだった。

「いいね。これにしよう。」

ウェイターを呼んで、このコースを頼むと最後に『お客様、お目が高いですね。』と言われた。

おそらく店で働く者も、一目置く料理だったのだろう。

「フランス料理は、どこかで食べた事があるの?」

「フランス料理なんですか?あれ?」

キョトンとしているところを見ると、意外と鈍い面もあるのかと思ってしまう。

「前に父が食べさせてくれた物があったので、それで選んだのに。私が選んだ物、間違っていませんでした?」

「否。逆に大正解だったよ。」

小さくホッとした仕草を見せて、彼女はクシャっと笑った。

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