テキストサイズ

スキをちょうだい。

第5章 亀裂ノあいだ


「ねぇ、航太くん。手、握ってもいいかな?」

 答えの代わりに、航太は手を差し出した。

 二人は、昼間と同じように手を握りあった。
 が、昼間にはなかった気恥ずかしさを感じ、同時に吹き出した。

「恥ずかしいね」

「それはこっちのセリフだ」

 何とか取り繕おうとしたが、しようとすればするほど、心臓が早く打つのを、航太は感じた。

ーさっき、変なのみたからだ…‥。

 前のカップルを恨みながら、気分を落ち着けようとする。

 すると、かなでが手を離した。

 安心したのも束の間、彼は、航太の指と指の隙間に自らの指を絡めた。

 思わず、目を上げると、かなではウインクをした。

「デートなんだから、ね?」

「…‥バカじゃねーの」

 悪態をつきながらも、航太はまんざらではなさそうだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ