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秘密のアルバイト

第19章 ちょっとだけ雅紀side2

部屋を見渡しても、かずはどこにもいない。
どこかに隠れているのか?

俺は話をきりだした。

でも・・・


「さぁ、もういいかな。
今からやる事があるんだ・・・帰ってもらえる?」

「あの・・・もう少し・・・」


追い返されてしまった。

かず・・・
かずはどこにいるんだ?
無理矢理部屋の中を、探し回ればよかったかな?

俺はあそこにずっと立ってたけど、この部屋から出てきた様子はない。


ー僕と二宮君の問題なんだから・・・ー


どういう事だ?
この関係をかずは望んでいるって言うのか?

そんなはずはない。

だって・・・

だってかずには、悔しいけどお兄さんと言う人がいるんだから。

ただこんな事をしているなんて、さすがに黙ってはいるとは思うけど。

廊下の窓から外を眺めていた。


しばらくすると、人も来ない、外の声も聞こえてこないこの廊下に、何かが聞こえてきた。


「何これ?どこから聞こえてくるんだ?」


その声は部屋から聞こえてきた。
ドアの前に立ち、耳を澄ませた。


「これってもしかして・・・
・・・えっ?・・・あっ!」

「あぁん・あぁん・・・あぁん、イクッ!」


それは紛れもなくかずの声だった。
女の子のように喘ぐかずの声だった。


「かず・・・かず・・・」


俺はゆっくりと歩き出し、部屋を訪ねる前に立っていたところまで戻った。

膝を抱え座り込んでいると“バタンッ!”とドアが閉まる音がした。

そっと覗き込むと、フラフラと歩いてくるかずがいた。

手をさしのべたかったけど、今の俺にはできなかった。

俺に気付くことなく、通り過ぎていくかず。


「かず・・・ごめんね」


そんな事を呟いて、俺はかずの後ろ姿を見送った。










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