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父さん

第2章 記憶

『あんた父さんに訴えられたよ』


最初その文字を読んだとき思ったのは『はぁそうですか』とその程度だった。

それもそうだ。
まさか実の父親に裁判を起こされようとしているなどあまりに現実離れが過ぎる。
それこそ夢の中での話。
ファンタジーだ。

とりあえず内容を聞いてみる。
要するに、数年前両親が離婚する際決めた私への養育費の支払いをやめたいということだった。
再婚相手との子供が生まれ金銭的に厳しいと。

たわけたことを。医者のくせに。

父は市立病院で勤務医として働いていた。
看護婦との不貞行為。
金銭トラブル。
色々あった。
当直と称して家に帰らないことなどしょっちゅうだった。
実際にはどこにいたのか分からない。

もうすでに忘れかけていた父の記憶。
恨めしくも懐かしい記憶。

私の中に落ちていた小さな小さな記憶達が今、少しずつ目を覚ましていた。





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