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Tears ~緑のしずく~

第11章 花水木の咲く町で

〝俺たち、結婚しないか?〟
 その短いひとことが
あなたからのプロポーズだと
 判るまでに数秒はかかった

 こみ上げてくる嬉しさを
できるだけ表に出さないようにしながら
 私 落ち着いた微笑で答えたわ
〝少しだけ考えさせて〟

 その瞬間
あなたの顔が強ばっていった
でも 私は何故か そのことに
少し残酷な歓びさえ感じた

 あなたは
生まれながらに すべてのものを持っている恵まれた男性

 ルックスも聡明さも
巧みな話術も 
誰もを魅了してやまなかった人

 そんなあなたが
どうして 私のような冴えない女を選んだのか

きっと私たちの周囲の人たちよりも
当の私がいちばん不思議に思っていた 

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