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Tears ~緑のしずく~

第14章 Tears ~緑のしずく~

 外に一歩出た瞬間
 鼻腔をくすぐる緑の香り
 雨と土の混じった
   そこはかとない匂いを
 深呼吸して胸一杯に吸い込む

 この匂いが
 私は昔から好きだった
 自然のままの原初の匂いは
 私の底に淀んだ
 すべてのものを
  きれいに洗い流して
   生まれたままの私に戻してくれる

 洗い立ての洗濯物のように
 まっさらな心になり
 煩雑な日常へ戻ってゆく
 力を与えてくれる

 雨上がりの樹木が
 しっとりと色づき
 葉のエメラルドグリーンを際ただせている

 葉のうえの雫がきらきらと光る
 そんな雨上がりの午後が
 私は今も好き

 そういえば
 昔 こんな歌が流行った
 〝いちばん大好きだった〟
 失恋した若い女性の心模様を
歌っていた
 その頃は私もバツイチになったばかりで
 何となく自分の心とか身の上を
その歌の中の女性に重ねていた
 歌の中で 彼女は 
 雨上がりの公園を歩きながら
緑のまぶしさに目を細める
 
 人生を大きく変えるようなことがあると
 かえって そんな何気ない自然のワンシーンに目を奪われ
 心動かされることがあるのだと
 その時 初めて知った


 
 

 

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