
社長様のモノ
第2章 二人の関係
社長さんの顔が見えなくなって、ただ、ファスナーを閉められるのを待つ。
………………
中々 閉めないな、と思い、
後ろを振り返ろうとした瞬間、
首筋にチクッとした痛みを感じた。
ここからは見えないけれど、多分 社長さんの唇が、
その痛みを与えているのだろう。
「社長…さんっ…?」
姿が見えない不安で、そう呼びかけた。
「社長さん、じゃない。煌貴(こうき)。煌貴って呼べ」
またまた命令口調で言われ、私は 渋々 言った。
「……こう、き………っ、社長………」
やっぱり呼び捨ては気が引けると思い、最後に『社長』をいれた。
すると、耳元に息を感じ、ピクッと反応する。
「俺は、杏樹の前では ただの天堂 煌貴だから。
敬語使うのも、さん付けも禁止。
二人の時は、『社長』も禁止な」
甘くて低い声でそう言われ、ぞくっする。
そして、心臓が騒がしい。
