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濃密 恋絵巻

第3章 ~過去~

 
 
 
戸が閉められていない暗闇の部屋を月明かりが差し込み、ゆりなはその明かりに気が付いて目を覚ました。
 
 
 
「…んー……」
 
 あれ…?
 
 
 
自分が布団の中で眠っていた事に疑問を抱きながら、上半身を起こして辺りを見回した。
 
月蔭と琴刃が戦っていた部屋とは別だが、ここも布団しかなくガランとしている。
 
 
 
「…月…蔭…?」
 
「なんだ?」
 
 
 
いつの間にか出入り口の前に立っている月蔭の姿があり、戦いの後とは思えない程いつも通りに見える。
 
 
 
「もう起きても大丈夫なのか?」
 
「あ…うん…月蔭は…?」
 
「夜が明ければ妖力も戻るから心配ない」
 
 
 
そう言いながら、月蔭は徐にゆりなの前に腰を下ろした。
 
 
 
「本当っ?」
 
「あ、ああ…」
 
 
 
ゆりなはふと琴刃の無残な姿を思い出し、いきなり月蔭に抱きついた。
 
 
 
「ゆりな?」
 
「月蔭が無事で良かったけど……でも琴刃さんはっ……」
 
 
 
今にも泣き出してしまいそうな声に、月蔭は身体を離して確認するように顔を合わせた。
 
すると、ゆりなの目からは涙が溢れ出ていて月蔭はそれを指で拭った後頬に口付けをした。
 
 
 
「あ…」
 
「殺されかけたのに…お前はあいつの為に涙を流せるんだな…」
 
「だって…琴刃さんは月蔭の事が好きだっただけでしょうっ…?」
 
「ああ…俺が永年あいつの想いを無視した結果だ…
だから、あいつの最後は俺の手で……」
 
「月蔭…」
 
 きっと…一番辛いのは月蔭…なんだ……
 
 
 
「気を失っている間あいつは葬った…
…夜が明けたら供養しに行こう」
 
「うん…」
 
 
 
月蔭は華奢な身体を包み込むように抱き締め、しばらく2人は互いの温もりを全身で感じた。 
 
 
 
 
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