バラードは君だけに
第12章 束の間の愛に
「美羽、おいで」
湊さんが自分の横をポンポンと叩いた。
「えっ…でも」
「大丈夫。何もしないから」
私は頷いて湊さんの隣に寝た。
お互い仰向けになって、天井を見ていた。
「あのさ」
「はい…」
私は隣の湊さんに顔を向けた。
湊さんと目が合うと胸がギュッとなる…。
「僕、今とてつもなく眠いんだよ。だから子守歌、歌って」
「えーっ…子守歌!?」
私は突然の要求に、ただびっくりしていた。もしかして甘えん坊?
「そうだ」
「わ、私子守歌なんて歌ってもらった記憶ないし、知りませんっ」
私は拒否したが、湊さんは譲らない。
「君に将来自分の子どもができたら、歌ってやらなきゃならないんだぞ?だからこれは練習だと思え」
「そんな、恥ずかしいですよ」
「僕に恥ずかしいなんて思わなくていい。歌ならなんでもいいんだ。ほんとにちょっと…寝るから」
「…っ」
湊さんは目を閉じてしまった。
しょうがない…半分寝てるし。
私は考えた末、誰でも知っているある童謡を歌った。
小さめな声で
ゆっくり
ゆっくりと
湊さんに歌った……。