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はな*つむ

第3章 ハナ

 凛々しい女性は少女に視線を落とす。

「どうですか、玉希(たまき)」

 問われた少女、玉希は氷雨を上目使いで見つめる。

どうにも恥ずかしい様で、口をきゅっと閉じながら頬を紅く染めていた。

 氷雨と目が合うと、さっと下を向いて目を閉じる。

「は、はい、間違いございませんです」

 顔を紅くしながら玉希は答え、着物の袖で顔を隠した。

「……よろしい」

 女性はそう言ってから氷雨を見る。

 その眼差しに息をのむ氷雨。
緊張の余り手に力が入った。

「退魔師氷雨殿、花浄院(かじょういん)にお向かいください」

「花浄院?」

 氷雨は首を傾げる。
都の外をあまり知らないせいか、その名前に覚えはない。

「申し訳ない、何故花浄院に行くのですか?」

 紅蓮はその場所を知っているらしく、戸惑った口調で質問をした。

「それはその場所に行けば分かります、此度は退魔師、神威殿と二人でお行きなさい」

「嫌です」

 女性の言葉に対し、即座に氷雨が拒否を示す。
隣の紅蓮が「氷雨様!?」と驚愕の声を上げた。

 女性も氷雨を見つめて言葉を無くす。

「お役目は全力で行いますが、神威殿だけは嫌です!」

 必死にそう訴える氷雨。
 どうにも氷雨は神威が苦手だった。
 獣の様な眼差しも、強引な態度も、全てが此方の行動を乱す。

 なによりも……闇烏の巣での出来事が氷雨の中で引っ掛かっていた。

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