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はな*つむ

第3章 ハナ

 もしもまかり間違って、またあんな事になってしまったら……。

 そう考えると不安になるのだ。
 次はあの快楽に溺れて、支配されてしまいそうだと感じる。

 だからこそ、神威との行動は避けたい。

「……ダメです、神威殿と行きなさい、これは皇族からの命令です」

 氷雨の事情など全く知らぬ女性は、権力を武器にして告げた。


 当然、次は拒否など出来るハズも無く……。


 氷雨は渋々神威とのお役目を受け入れた。





 二人は出掛ける支度をするために一旦屋敷に戻る。

「紅蓮、花浄院ってどんな場所なのです?」

 髪をまとめながら氷雨は聞く。

「都の方々が秋にお祭りを行う場所です、都の外にある猪狩山(いかりやま)の中腹にあり、様々な花が咲いていると聞きますよ」

 紅蓮の説明をきき、氷雨は首をかしげた。
 確かに、紅蓮が“何故花浄院に?”と聞いた意味が分かる。

 説明を聞く限り、退魔師が向かう必要性が見えない。

(悪い妖怪でも住み着いたのかしら)

 そう考えながら氷雨は術符を衣の隙間に忍ばせた。









 同時刻、都の中心に造られた大きな屋敷。
 都の頂点に立つ帝がいるこの屋敷は迷路の様に複雑に出来ている。

 屋敷には貴族、官職の者達が住む区画、皇族が住む区画、そして使用人や退魔師に提供された区画が存在する。

 その退魔師に提供された区画の一室から濡れた音が響いていた。

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