
夜が開けるまで
第1章 仮面夫婦
若い外交員の中には枕営業をする者もいる。
「君は保険屋さんにしておくのはもったいないねぇ。
紹介したい方がいるから、今度一緒に食事でもどう?」
設計書を見ながら、客は、正面に座る由紀のスカートの奥にチラチラ視線を向ける。
「ありがとうございます。
大変ありがたいお話しなのですけど、家庭があるので、私の営業時間は6時までと決めてるんです。」
だが由紀は自身が身体を張る枕営業よりも、さらに効率的な営業マンを背後につけて顧客の信頼を得ていた。
彼女は所属する保険会社の支社長と、ただならぬ関係にあった。
