センシティブ♥ボーイ
第26章 ちょっと距離を置こうか。
震える身体を抱きしめようとしてもブンブンと首を振って、身体を捩って抵抗されてしまうし。
話を聞いても何も言わないし。
どうしたらいいのかわからない。
「どうしたんだよ。そんなに…そんなに俺に触られんのいや?」
「………」
「俺と話すのも嫌なの?」
「………」
「メール見た?電話もずっとしてたけど。見てない?」
「………」
カエルに話したほうが言葉が返ってくる。
勝手にひとりで話してるみたいだ。
カエルの羽がバタバタと音を鳴らした。
「なんだよ…ああ、そっか、俺に飽きたの?」
「……あ…っ」
冗談で言ったのに。
佐藤はその言葉にだけ大きく反応を示した。
「………なんなんだよ…」
……ああそう。
そういうこと。
なんだよ。言いたいことがあんなら、その口で言やあ良かったんだ。
学校でも付き纏われるもんな。
電話されんのも迷惑だったんだよな。
「飽きたなら飽きたってその口で言えよ……避けて……避けて…っ距離取ろうなんて、そんなの卑怯だぞ!!」
「―――う――…」
俺の声に佐藤はポロリと一粒だけ涙を零すと口元を震わせた。
俺も泣きそうになって、唇を噛み締めると、佐藤はボロボロと涙をこぼす。
――――泣きたいのはこっちだよ。
佐藤は嗚咽を漏らしながら腫れぼったい瞳で俺を見つめて、小さな小さな声で言葉を紡ぐ。
その声は幻聴だと思った。
幻聴であってほしいと願った。
「僕…僕……鈴木くん…嫌い……」
佐藤の声が。
瞳が。涙が。言葉が。
何もかもが染み付いて、こびりついて、離れない。