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小春食堂【ARS】

第26章 走る走る【雅紀】

次の日の朝、俺は眠い目をこすり、町内の大掃除に出席した。

地域のごみ拾いと、廃品回収の手伝いだ。

「おう、まーくん。今日はお父さんじゃないのか?」

向かいのおじさんが聞いてきた。

「おはよ、おじさん。父さん腰いわしちゃってさ。」

「そうか。まーくんも毎日重い荷物運んでんだから、腰痛には気をつけるんだぞ。」

そこに、三軒隣のおばさんが話に入ってきた。

「まーくん、おはよう。ケンジくん、中国に出張だってね。」

「あぁ、はい。」

このおばさんは噂好きで、何でもペラペラしゃべるから、子供の頃から苦手だ。

「ケンジくん、すごいわね~!関東セラミック勤めなんて、超エリートじゃない!海外にもしょっちゅう行ってんでしょ?」

「はぁ、まぁ…」

「関東セラミックって、お給料いくら?ボーナス何ヵ月分出るの?」

「いや、俺知りませんから。」

「まーくんは毎日トラックで都内を走り回って、ケンジくんは世界を飛び回ってるなんて、差がついちゃったわね~!」

「……」

廃品回収の回収場所から、向かいのおじさんが俺を呼ぶ声がしたので、おばさんの話の途中でそちらに走った。

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