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小春食堂【ARS】

第3章 茄子とにしんの炊いたん【翔】

「うまかった…」

こんなにうまい飯をブログにアップできないなんて、もったいな過ぎる。

路地の奥の、看板のない定食屋。
しかもメニューはひとつ、日替わり定食のみ。
写真どころか携帯電話も使用禁止。
料理はめっぽううまい。

こういう「隠れ家」的な店は、ブログのフォロワーは好む。
誰も知らない特別な場所を、自分だけが知っているという優越感。

この店をブログにアップしたら、絶対に閲覧数は伸びる。

それに、今日はこのことをアップできなければ、他にブログの載せる記事はない。

ブログは、更新しないと、あっという間にフォロワーは離れていく。
毎日、新しい話題を提供しなければいけないのだ。


「あの、女将さん。」


俺は、カウンターの向こうに立つ女性に呼びかけた。


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