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小春食堂【ARS】

第33章 約束の5日間【智】

「おばちゃん、コーヒーふたつ。」

俺の通う美大はおしゃれなカフェテリアとかは無縁で、なじみのおばちゃんにコーヒーを頼む。

「智くん、えらいべっぴん連れて!新しい彼女か?」

おばちゃんが小春さんを見て冷やかす。

「馬鹿…!モデルさんだよ!」

俺はコーヒーをふたつ受け取ると、席に着いた。

「よう、智!美人連れてどうした。新しい彼女か!」

同級生のタケシが絡んできた。

「だから!モデルさんだって!」

タケシはとにかく明るい。
俺と並んで席に着くと、会話に割り込んできた。

「モデルって、卒業制作の?」

「ああ。」

「どこで?実習室?」

「……、Aアトリエ。」

「Aアトリエ!?ふたりきりで?」

タケシは身をのり出した。

「お姉さん、こいつに何かされませんでした?こいつ、高校生みたいな顔して、結構危険なんですよ!」

「バカヤロ!」

俺は タケシに蹴りを入れた。

タケシは、「お姉さん、一度陶芸科の実習室も見に来てよ!」と叫びながら消えて行った。

小春さんは、口をぽかんと開けていた。

しばらく口を開けていたかと思うと、呆れ果てたんだろう。
ケラケラと笑い出した。

それから、学食を通った友達全員に「新しい彼女か?」とからかわれた。

小春さんは、おかしくてたまらないようでずっと笑い転げていた。

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