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小春食堂【ARS】

第35章 芸妓【小春】

うちは小春。
祇園の芸妓や。

祇園の置き屋に生まれて、中学を卒業すると同時に舞妓になった。

お母さんはうちの実の母で、置き屋の女将や。

置き屋言うのは、舞妓や芸妓を住み込みで修行させてお座敷に派遣する、まぁ言うたら芸舞妓のプロダクションみたいなところや。

置き屋に生まれたうちは、当たり前のように舞妓になって、二十歳を目の前に芸妓になった。

舞妓は、だいたい二十歳までやな。
それを過ぎるとみんな芸妓になる。

お座敷に出ることには変わらへんけど、髪型やら着物やらいろいろ違うんや。

うちは置き屋の娘やさかい、跡を継ぐもんやと言われて育った。
うちも、祇園の花街の女という誇りがあったし、当然そのつもりやった。

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