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小春食堂【ARS】

第36章 約束の5日間【小春】

教授(せんせい)に聞かされた約束の日、うちは嵐山にほど近いところに建つ美大のロビーに来ていた。

ほんまにかなんわ。
あんなに嫌や言うたのに。

美大の学生なんて素人のモデルなんかアホらしくてやってられへん。
教授の頼みやなかったら、絶対断ってるわ。

うちは不機嫌やった。

すると、後ろから声がした。

「こんにちは、お待たせしちゃって。俺、大野智です。」

振り替えるとひとりの青年が立っていた。

くたくたのTシャツにぽっかり穴の空いたジーンズ。
小柄で華奢な体に、寝癖のついた髪の毛。
頼りなげな笑い方。

ほんまに大学4回生?
どう見ても高校生にしか見えへん。
少年といった方がふさわしい、そんな感じやった。

「小春どす。よろしゅうおたのもうします。」

うちは、建前上丁寧に挨拶をした。

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