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小春食堂【ARS】

第37章 美術館【小春】

うちは、じっと待った。

大野さんから卒業制作展の案内状が届くのを。

壁に貼った大野さんの絵を眺めながら待った。

お母さんから、大野さんとは個人的なやり取りはしないようにきつく言われていたから、お互いの連絡先も知らない。

教授(せんせい)の顔を潰すようなことはできひん。

花街は信用が第一や。
信用なくしては成り立たへん街や。

季節が変わっていくのを、うちはじっと待った。

「美術館で会える。」

その約束だけを信じて。

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