
小春食堂【ARS】
第42章 エピローグ
その夜、店の戸が開いたと思ったら、櫻井さんが転がり込んできた。
「小春さん、か、か、かん…。」
興奮して言葉になってない。
「今日は鮭の西京漬けやで。」
「かん、かんばん…!」
「櫻井さん、うちの店ブログに載せてもええよ。」
「は、はぁ?」
「住所は伏せてな。お客さん増えすぎたら困るし。」
「はぁ?は、は、はぁ!?」
櫻井はそのままへたりこんでしまった。
私は、バットに仕込んであった鮭の西京漬けを取り出した。
鮭の切り身を西京味噌という京都の白味噌に漬け込んだものだ。
余分な味噌を落とすと網にのせて、コンロに火を点ける。
西京漬けは味噌が焦げやすいから、火加減を調節しながら焼いていく。
鮭の香りが立ち上る。
味噌の焼けた香ばしい香りと、西京味噌特有の甘い香り。
焼き上がった鮭を皿に盛り、小鉢ふたつと味噌汁を添える。
小鉢は、切り干し大根と小松菜の煮浸しと、伏見唐辛子のじゃこ炒め。
白ご飯は、櫻井さんには大盛りにしておく。
力なくカウンターの席に着いた櫻井さんの前に、料理がのったお盆を出す。
「どうぞお食べやす。」
もう私は大丈夫。
逃げも隠れもせぇへん。
もし祇園のお馴染みさんに見つかっても、お母さんが連れ戻しに来ても。
「かんにん、お母さん。でも、私東京で生きていく。」
胸を張って言える。
大野さんと結ばれたい、とかそんな気は毛頭ない。
ただ、ここで定食作って暮らしていきたい。
大野さんと同じ東京の空の下で…。
「小春さん、か、か、かん…。」
興奮して言葉になってない。
「今日は鮭の西京漬けやで。」
「かん、かんばん…!」
「櫻井さん、うちの店ブログに載せてもええよ。」
「は、はぁ?」
「住所は伏せてな。お客さん増えすぎたら困るし。」
「はぁ?は、は、はぁ!?」
櫻井はそのままへたりこんでしまった。
私は、バットに仕込んであった鮭の西京漬けを取り出した。
鮭の切り身を西京味噌という京都の白味噌に漬け込んだものだ。
余分な味噌を落とすと網にのせて、コンロに火を点ける。
西京漬けは味噌が焦げやすいから、火加減を調節しながら焼いていく。
鮭の香りが立ち上る。
味噌の焼けた香ばしい香りと、西京味噌特有の甘い香り。
焼き上がった鮭を皿に盛り、小鉢ふたつと味噌汁を添える。
小鉢は、切り干し大根と小松菜の煮浸しと、伏見唐辛子のじゃこ炒め。
白ご飯は、櫻井さんには大盛りにしておく。
力なくカウンターの席に着いた櫻井さんの前に、料理がのったお盆を出す。
「どうぞお食べやす。」
もう私は大丈夫。
逃げも隠れもせぇへん。
もし祇園のお馴染みさんに見つかっても、お母さんが連れ戻しに来ても。
「かんにん、お母さん。でも、私東京で生きていく。」
胸を張って言える。
大野さんと結ばれたい、とかそんな気は毛頭ない。
ただ、ここで定食作って暮らしていきたい。
大野さんと同じ東京の空の下で…。
