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小春食堂【ARS】

第5章 俺がブロガーになった訳【翔】

俺はびっくりして、体を離した。

「な、何するんですか…!」

「いいじゃない、ちょっとくらい。翔くんがあんまりかわいいから…、ねぇ…」

店主は俺に抱きつき、ソファに押し倒した。

「や、やめてください…!」

「怒った顔もかわいいわね…」


店主は、顔を近づけてきた。
今まで嗅いだことのない、大人の女の…、メスの匂いにゾッとした。

唇が触れる寸前、俺は店主を思いっきり突き飛ばした。


「やめろ!」

「そんなこと言っていいの?
広告出してほしいんでしょ!」

「うっ…」


あちこち頭を下げて、やっとつかんだ広告だ。
こんなことでオジャンにしたら、サークルの仲間に何て言ったらいいか…

「翔くん、いい子だから…、ね…?」


突き飛ばした店主が体を起こし、四つん這いで俺の方に向かって来た。
まるで、女豹だ。


俺は、鞄と傘をつかむと、出口に向かって走った。
店のドアには鍵がかかっていた。
鍵のつまみを回すだけで開くはずなのに、焦ってうまくいかない。

そうこうしているうちに、店主が追いついてきた。


「あぁ!みんな、ごめん!」


俺は、店主に向かって傘を投げつけた。

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