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小春食堂【ARS】

第8章 これからの未来へ【翔】

「こんばんは、小春さん。」

「いらっしゃい、櫻井さん。また来てくれたんや。」


あれから半月ほどして、俺は再び小春食堂をたずねた。

俺は、カウンターの席に座り定食と瓶ビールを注文した。


「お土産です。京都に行ってきたんです。」


俺は、小春さんに紙袋を渡した。


「わぁ、一保堂の京番茶!」

「これでしょ?お店で出してるお茶は。」

よくわかったなぁ!と小春さんは感心しきりだった。
俺のリサーチ力は半端ではないよ、と内心勝ち誇った気持ちだった。


「実はね、見せたいものがあって。」


俺は、鞄の中からクリアファイルを取り出すと、小春さんに渡した。


「京都旅行の様子をブログにアップしたんです。これはそのプリント。」

「わぁ、ほんまやね。おばんざい屋さんも何軒も…」


俺は、ビールをグラスに継ぐと一気に飲み干した。


「いやぁ、一泊二日でおばんざい屋さん6軒はさすがにキツかったですよ。」

「6軒!?一泊二日で?」

「他にも、流行りの和風雑貨屋とか、カフェとか何軒かね。」

「はぁ…」


小春さんは、口をぽかんと開けたまま、ブログのプリントを読んでいる。


「もちろん、すべての店で取材許可をとりましたよ。」

「あら、それは嫌みやろか?」


俺と小春さんは、お互い目を合わせて、そして、ははは…、と笑った。

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