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小春食堂【ARS】

第13章 絶体絶命【和也】

「まずいな。」


誤植自体あってはならないけど、特に間違えるとまずいもののひとつは電話番号だ。

間違えて載せた番号に使用者がいた場合、鈴木産業さんにも番号の使用者にも迷惑をかける。

誤植の上から正しい番号を印刷したシールを貼って修正するか?


「南!訂正シールいけるか!?」

「シール印刷の外注先に問い合わせしましたが、連休前で今からは無理だと…」

「山さん!デザイン室のプリンターとシール紙で自作できませんか。」

「デザイン室のシール紙とリーフレットは色が違うので使えません。」


俺は、デスクを力一杯叩いた。


「くそっ!山さん、なんでちゃんと確認しなかったんですか!」

「しかし、入稿原稿とは一致してましたし…。」

「山さん、鈴木産業さんの担当者と名刺交換したでしょ。その名刺に正しい電話番号載ってたでしょうが!毎月、高い残業代払ってんのにこんなことじゃ困りますよ!」


山さんは、うっ、と黙った。

その様子を見ていた南が口を開いた。


「その時の打ち合わせには、社長も同席してたんじゃないですか。山さんだけを責めるのはどうかと思いますよ。」


俺は、痛いところを突かれて、言葉を失った。

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