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小春食堂【ARS】

第14章 自分ができることなんて【和也】

「工場長がどした。」

「工場長、あの日、息子さんの部活の全国大会だったんです。」

「息子って…、高校生の?」


南は小さくうなづいた。


「工場長の息子さん、中学の頃から全国大会目指してて…。今年、やっと都大会を勝ち抜いて全国大会に出場決めたんです。」

「“あの日”って…。印刷機まわした日か?」


「はい。オレ、この前工場長と昼飯行ったときに聞いたんです。」


俺は、バットで頭を殴られたようなショックを受けた。


「工場長、すげぇ喜んでました。“全国大会は絶対に応援に行くんだ”って。」

「…そうか。」


南は、言い終わると社長室を出ていった。

扉が閉まると俺はダムが決壊したように泣いた。

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